小野山公認会計士事務所

実質支配関係と非上場株式の評価(低額譲渡によるみなし贈与課税)

非上場株式の評価は取得者が同族株主か、同族株主以外の者かによって評価が変わります。同族株主以外の者が取得した場合、配当還元方式による評価額で譲渡できることから、譲渡価額と譲渡所得課税を抑えることができます。このため、形式的に同族株主以外が取得したようにして配当還元方式により譲渡し課税を抑えることを考えられることがありますが、同族株主は議決権比率だけで判定するわけではないことに十分な注意が必要です。

 

【事案】

個人株主A、B、Cは直系血族であり、A氏が保有するZ社の持分をX社とY社に配当還元価額で譲渡した事例になります。

 

実質支配関係の判定による非上場株式評価でみなし贈与が発生した事例

 

1. 同族株主の判定

 

① B及びC氏とX社の関係

B氏とC氏の両者でX社の議決権66.6%と50%超保有しているため、X社はB・C氏の同族関係者となります。

 

② B及びC氏とZ社の関係

B氏とC氏が直接保有するZ社の出資比率0.005%と同族関係者X社が保有するZ社の出資比率28.6%を合わせると出資比率は28.605%になります。ただし、Y社とZ社は株式を相互保有しておりZ社はY社の議決権を25%以上保有していることから、相互保有株式の議決権制限により(会社法308条第1項)Y社はZ社の議決権を有しないことになります。これによりB・C氏とX社が有するZ社の議決権比率は(5+23,995)÷(100,000-24,000)=31.57%となります。

 

③ Y社とZ社の関係

B氏及びC氏とX社はZ社の議決権比率の31.57%を保有していますが、法人税法施行令4条3項に規定されている50%超を保有していないため、形式的にはZ社はB・C氏の同族関係者には該当しないことになりますが、ここで争点になるのが実質支配関係になります。

Z社は取引先13社に株主として入ってもらっていますが、総会にも出席せずA氏、B氏の意向に反することもなく、同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合に該当すると考えられるため、B氏及びX社が議決権の50%超を保有しているものとみなされます。Z社が同族関係者になると、B氏及びC氏とX社、Z社を合わせてY社の議決権63.29%を保有していることになるため、Y社はZ社の同族株主となります。

 

 

2. みなし贈与課税

 

この判定により、X社とY社に譲渡したZ社の持分評価額は、配当還元方式ではなく純資産価額方式、又はS1+S2方式により評価することになります(Z社の資産のほとんどがY社株式であり株式保有特定会社に該当するため)。

今回のケースではZ社の持分を時価よりも著しく低い価額で譲渡を受けたことにより、X社とY社の株式・持分価額は上昇することになります。B氏はX社とY社の株式・持分を保有していることから、X社、Y社の株式・持分価額の上昇によって間接的にA氏からB氏に利益が移転したことになるため、相続税法9条を適用し約400百万円贈与を受けたものとみなして課税処分が行われています。

 

 

相続税法9条(みなし贈与)

第5条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額) を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈) により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。

 

【関連コラム】

同族株主の範囲の注意点(実質支配関係)

 

 

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