小野山公認会計士事務所

太陽光発電に係る税務(減価償却・生産性向上設備投資促進税制・所得税・確定申告)

個人、法人(人格なき社団等も含む)が余剰電力を売却して収入を得ている場合、税務申告をする必要がありますが、個人における所得区分、太陽光発電設備の減価償却計算に係る耐用年数、グリーン投資減税の適用など税務上のポイントがあるため注意が必要です。

 

Ⅰ 個人の場合

1. 所得の区分

 

個人の場合は、売電の状況により所得の取扱いが変わる点に留意が必要です。

太陽光発電の売電収入の所得区分

 

自宅兼店舗で、発電される電力が事業所得を生ずる業務の用に供されている場合は、事業用資産に該当するため(所得税法第2条第1項第19号)、余剰電力の売却収入は全て事業所得の付随収入となります。また、賃貸不動産に設置した太陽光発電設備は、発電した電力を共用部分等で使用する電気に使用し余剰電力を売電する場合は、不動産所得の必要経費となる電気料金を減少させることから不動産所得になりますが、全量売電の場合は不動産所得との関連性がないことから、基本的には雑所得に該当します。

全量売電の場合に、事業所得になるか雑所得になるかは、社会通念上事業として認めらるか否かによります。資源エネルギー庁のHPには以下の記載がありますが、100%事業所得になるとは限りませんので青色申告特別控除、グリーン投資減税、生産性向上設備投資促進税制の適用も含めてご留意下さい(関連コラム 事業所得と雑所得の区分)。

 

例えば、電気主任技術者の選任を行っている場合(出力量50kW以上の場合)は、一般的に事業所得になると考えられます。また、出力量50kW未満の場合であっても、次のような一定の管理を行っているときなどは、一般的に事業所得になると考えられます。

① 土地の上に設備を設置した場合で当該設備の周囲にフェンス等を設置しているとき

② 土地の上に設備を設置した場合で当該設備の周囲の除草や当該設備に係る除雪等を行っているとき

③ 建物の上に設備を設置した場合で当該設備に係る除雪等を行っているとき

④ 賃借した建物や土地の上に設備を設置したとき

(出所:資源エネルギー庁ホームページより)

 

 

なお、自宅の屋根にソーラーパネルを設置し余剰電力を売却する等の事業に関連しないものは雑所得になります。所得(収入‐必要経費)が発生する場合、原則は確定申告をする必要がありますが、以下の条件に当てはまる場合は確定申告をする必要はありません(所得税法第121条)。

 

① 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人

 

② 2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人

 

③ 公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合

 

ただし、上記の特例は年末調整だけで完結する方の申告負担を緩和するための措置であるため、医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除の申請、株式・先物・FX等で確定申告する場合は、20万円以下の雑所得も申告する必要があるため注意して下さい。また、20万円以下の少額申告不要は所得税だけの話であり、住民税は関係ありませんので、その場合は住民税の申告書のみ提出することになります。

 

2. 減価償却費

 

一般的な自宅に設置する太陽光発電設備は有形固定資産の「機械装置」となり耐用年数は17年(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第二「55 前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区分によらないもの」の「その他の設備」の「主として金属製のもの」)になります。また、必要経費に算入する減価償却費の額は、発電量のうちに売却した電力量の占める割合を業務用割合として計算します。

また、系統連係工事に係る工事負担金は繰延資産として処理します。工事負担金の償却は支出の効果の及ぶ期間で償却をすることになりますが、契約で定められた受給期間、または無形固定資産の電気ガス供給施設利用権の法定耐用年数15年を適用することになります。

 

3. 青色申告と消費税還付 

 

事業所得に該当する場合は、青色申告承認申請書の届出を提出して青色申告をすれば、青色申告特別控除を適用することができます。

青色申告特別控除には売上と経費だけを簡易帳簿により記帳する10万円控除と、複式簿記により記帳する65万円控除があります。65万円控除は複式簿記により記帳をする手間がかかりますが、10万円控除に比べて55万円多く利益から控除できるため、仮に所得税率20%の方であれば55万円×(所得税率20%+住民税率10%)=16.5万円節税につながりますので、適用を検討されると良いと言えます。

また、消費税の課税事業者選択届出を提出することにより、3年間は消費税の課税事業者の縛りを受けますが、1年目は太陽光発電設備に係る消費税の還付を受けることができます(弊事務所では申告によるシミュレーションを行っておりますので、ご相談下さい)。

 

4. 太陽光発電の産業分類

 

日本標準産業分類では、大分類 F 電気・ガス・熱供給・水道業気業、中分類 電気業(33)、小分類 電気業(331)、発電所(3311)になります。

類似業種比準価額の産業分類では、卸売業、小売・サービス業以外になり、大分類 電気・ガス・熱供給・水道業(54)、中分類 電気業(55)になります。

 

Ⅱ 法人の場合

法人の場合、売電収入は売上又は雑収入になります。

太陽光発電設備は機械装置として資産計上し減価償却を行いますが、耐用年数は設備の使用状況等からどの業種用の設備として通常使用しているかによって判定します(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-4-2)。

電力会社に全量売電するのであれば17年(耐用年数等に関する省令別表第二「31 電気業用設備」の「その他の設備」の「主として金属製のもの」)となりますが、発電した電力を主に事業で使用し余剰電力を売電する場合は、製造する製品に係る設備として判定します。例えば、自動車製造業であれば9年(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第二「23 輸送用機械器具製造業用設備」)、食料品製造業であれば10年(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第二「1 食料品製造業用設備」)になります。

*系統連係工事に係る工事負担金は前述参照

 

 Ⅲ グリーン投資減税

エネルギー環境負荷低減推進税制(グリーン投資減税)が導入されており、平成28年(2016年)3月31日まで適用することができます(租税特別措置法第10条の2の2)。

 

1. 対象者

 

① 青色申告書を提出する法人

② 青色申告書を提出する個人

個人の場合に注意が必要なのは、この制度の対象は事業所得の金額(又は事業所得の金額に係る所得税額)の計算における特例になりますので、雑所得になる場合は適用できない点です。販売業者の説明にはグリーン投資減税の話が出てくると思いますが、適用できない場合がありますので(前述の事業所得と雑所得の区分も含む)節税効果を考えている方はご留意下さい。

参照:賃貸アパートに設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入

 

2. 適用期間

 

100%即時償却:平成25年4月1日から平成27年(2015年)3月31日

30%特別償却または税額控除:平成25年4月1日から平成28年(2016年)3月31日

 

3. 適用条件

 

① 適用期間内に取得し、取得日から1年以内に事業の用に供する

② 固定価格買取制度の認定を受けた発電設備である

③ 出力が10キロワット以上である

*  国又は地方公共団体の補助金等により取得等したものは対象外

 

事業の用に供した時期については、電力会社との系統連係工事が完了し売電が開始した時点(電力需給開始日)が事業の用に供した日になります。しかしながら、太陽光発電設備の増加に伴い、系統連係工事に遅れが生じることがあり、発電しても電力会社へ送電できない状態が生じることがあります。このような場合、電力会社の都合によるやむを得ない事情により系統連係工事が遅れていることから、当初予定されていた系統連係工事の実施日を事業の用に供した日とすることも認められます。

 

4. 太陽光発電設備の認定を受けた者と確定申告をする者が異なる場合の取扱い

 

経済産業大臣への申請・認定手続は別の者が行い、その者から太陽光発電設備を購入した場合、太陽光発電設備の譲渡以前において、申請者が設備を事業の用に供していなければ購入した者でグリーン投資減税の適用を受けることは可能です。

設備の譲渡に伴う事業者の変更については、経済産業省令で定める軽微な変更に該当することから、当該変更に係る認定を受ける必要はありません。そのため確定申告書に添付する資料としては以下のものが必要となります。

① 当初認定を受けた者による申請書の写し及び事業者として記載された認定書類の写し

② 太陽光発電設備に係る売買契約書

③ 経済産業大臣に提出する「再生可能エネルギー発電設備軽微変更届出書」の写し

 

5. 減税効果

 

① 特別償却

取得価額の100%または30%を前倒しで減価償却することができます。

減価償却を前倒しで行うだけであり耐用年数の期間を通じた減価償却の総額は変わりません。課税所得がある場合、課税の繰延べ効果により税金の金額を抑えて資金回収を早める効果があります(耐用年数期間中の税金総額を低減する効果はありません)。

 

② 税額控除

取得価額の7%を税金から控除することができます。

ただし、資本金1億円以下の法人(大企業の子会社を除く)と個人事業主が適用可能

支払税金を低減するため永久の節税効果があります。税額控除金額には上限があり、法人の場合は法人税額の20%、個人の場合は事業所得に係る所得税額の20%になります。下図のように税額控除可能額>税額控除限度額の場合は、差額を1年間繰越して使用することができるため、設置した期を含めた2年間で税額控除限度額を使えるかを検討することが必要です。

太陽光発電設備の税額控除限度額

 

 

記事一覧に戻る   ページ上部へ移動

ページ上部へ移動

東京・名古屋・大阪・京都・神戸・滋賀・奈良で公認会計士や税理士をお探しなら小野山公認会計士事務所へ