海外のLLC・LPSにおける課税
海外において、株式会社以外のLLC(Limited Liability Company)やLPS(Limited Partnership)といった事業体を使って、海外不動産を所有し不動産賃貸業等を行うことがあります。日本でも米国の制度を手本にして、LLC(合同会社)、LLP(有限責任事業組合)が導入されていますが、海外のLLCやLPSが日本の租税法上の法人に該当するかしないかによって、事業から生じた損益の課税方法に違いが出るため留意が必要です。
米国におけるLLCやLPSの課税は、チェック・ザ・ボックス・ルールにより、法人課税か構成員課税(法人をスルーして出資者である構成員に損益が帰属)を選択することができるのが日本と異なっています(日本は、LLCは法人課税、LLPは構成員課税)。
1. LLC(Limited Liability Company)
米国のLLCが日本の租税法上の法人に該当するかについて争われた事例(さいたま地裁 平成19年5月16日判決)では、LLCは日本の租税法上の法人に該当するとの判決が下りました。更に控訴審(東京高裁 平成19年10月10日)においても地裁の判決と同じ結果となっており、海外LLCに関しては法人として扱われ、構成員課税(パス・スルー課税)は適用できないとされています。
2. LPS(Limited Partnership)
日本のLLPのように構成員課税(パス・スルー課税)が適用できれば、LPSにおける不動産事業の赤字を不動産所得として他の所得(給与所得等)と損益通算できることになります。ところが海外のLPSが日本の租税法上の法人に該当するかについて東京・名古屋・大阪で裁判が行われておりますが異なる判決が出ており統一的な解釈が出ていませんでした。平成27年7月17日の最高裁判決では、名古屋地裁・高裁の判決を破棄して、デラウェア州LPS法の定めによれば、LPSが権利義務の帰属主体であることから日本の租税法上の法人に該当し、他の所得と損益通算できないと結論付けられました。